「猫は赤ちゃんに優しい」というのは前からよく聞いていた。
我が家に初めて赤ちゃんがやってきた時も、本当にその通りだった。
うちの猫たちは、リビングで寝そべっている私やオットのお腹は遠慮なく踏みつけていくのに、赤ちゃんのいる場所は確実に迂回して通り過ぎる。これにはとても驚いた。
猫は、赤ちゃんや弱いものには本当に優しい。それは多くの猫がそうだと思う。
でも私たちは、その優しさに甘え過ぎてはいないだろうか。
つい、この間もこんな話を聞いた。
「昔飼ってた猫は本当にいい子で、子供からどんなに強く叩かれても、毛を引っ張られても、じーっと我慢してくれていたんですよ。」
こういう「猫が我慢してくれて偉い」というエピソードは、それほど珍しくはないと思う。
でも・・・そこ、自慢するとこじゃないから(・∀・i)
私は、まさにこれが「猫に甘えている典型的なパターン」だと思っている。
テレビやネットでも、赤ちゃんや幼児に追い回されて、尻尾を掴まれ、毛を掴まれ、ウンザリしている猫の投稿動画をよく見かける。
あれも正直、私は不快でならない。だから動物番組はあまり見なくなった。
猫がバンバン叩かれているのに、のんきに動画を撮って投稿してる人ってどうなの。それを「癒しの動画」「おもしろ動画」みたいに扱っているテレビ局ってどうなの。それを見た人たちは、その姿を可愛いとか微笑ましいとか感じているんだろうか。
私からすると、あれは「猫がただひたすら迷惑している動画」でしかない。中には、もうこれ虐待じゃん、と思うものもある。
自分の子供はとても可愛い。それは間違いない。私も自分の子供は可愛くて仕方がない。
だから、何をしてもつい許してしまいたくなる・・・・という気持ちは、まぁ一応は分からなくもない。
分からなくもないけれども。
そのせいで、大事なことを見落としてはいないだろうか。
大人から見たら小さい子供でも、猫から見たらどれくらいのサイズ感なのか、考えたことはあるだろうか。ぜひいちど、想像してほしい。
ひとまず我が家のケースで見てみる。
うちの猫の体重は、5キロ。
1歳半になる息子は、10キロ。
5キロの猫から見た10キロの子供を、私たちの目線に置き換えてみる。
成人男性の平均体重が70キロだとすると、相手は140キロのマツコ・デラックスさん。
成人女性で50キロだとすると、相手は100キロの内山信二くん(もしくはハチミツ二郎さん)である。
つまり、朝から晩までマツコ・デラックスに追い回され、バンバン体を叩かれ、髪の毛を力任せに引っ張られるということ。
こんな生活が続くとしたらどうだろうか。罰ゲームどころではない。
さらに、うちの猫よりもっともっと小柄の3キロの猫だったらもう大変。相手は140キロのマツコ・デラックスどころではなく、200キロのヒグマもしくはお相撲さんクラスの生き物ということになる。
身長185センチ、体重200キロのヒグマが、毎日楽しそうにあなたの身体をバシバシ叩いてくる生活、耐えられるだろうか。
子供は悪気はないんだから猫を叩いても仕方ないよね、なーんて笑って済まされる問題ではないことがお分かりいただけただろうか。
我が家は、サークルや柵を駆使して安全地帯をたくさん作っているので、今のところ猫が被害を受けたことはないけど、たびたびブログにこんなコメントをいただくことがある。
「うちの子は幼い頃は猫を叩いたりしていましたが、ちゃんとわかる年齢になれば自然となくなったので大丈夫ですよ!」
今までこの手のメッセージを何度もいただいた。
「大丈夫」って、何が?
「ちゃんとわかる年齢」って、何歳?
良かれと思ってアドバイスしてくれているのだろうけど、正直モヤモヤが止まらない。(そもそもアドバイス求めてないし)
まず、子供が「ちゃんとわかる年齢になる」というのはいつなんだろうか。3歳くらいだろうか。だとすると、ハイハイして自由に動ける生後半年すぎから猫を追い回すとして、2年ちょっと。
猫に2年も我慢してもらう、ということになる。長すぎるだろ。
そして、それだけでは済まない衝撃の計算がある。
猫の寿命は人間の4分の1とも5分の1ともいわれている。
人間の4倍のスピードで年を取っていると考えると、2年という月日は猫にとっての8年。
8年間、マツコデラックスに叩かれ続ける生活。
これを我慢してくれる猫って・・・もう優しいとかそんなんじゃない。
私なら、最初の1ヶ月で体調を崩す自信がある。
つまりそうやって、多くの猫は体調を崩す。
でも、猫が体調を崩したら、きっと多くの飼い主はこう言う。
「子供がいるストレスで猫が体調を崩したみたい」
出た。お約束。子供のせい。
前回同様、あえて言おう
原因は、飼い主であると!( ✧Д✧) カッ
子供は悪気なくやっているからと黙認しておきながら、何かが起こると責任を子供に押し付けるなんてヒドすぎる。
とにかく、一度でいいから猫の気持ちになって、考えてもらいたい。
猫が赤ちゃんに叩かれないようにするにはどうしたらいいか?
もし叩かれてしまった時はどう注意すれば分かってもらえるのか?
猫が誰にも邪魔されないでゆっくり休める場所はあるのか?
猫が誰にも邪魔されずにご飯を食べられているか?
猫が落ち着いてトイレができているか?
猫はあなたを癒すために自らボランティアを志願して来てくれたわけではない。
自分の意思とは関係なく、あなたに勝手に家に連れてこられたんだといることをどうか認識してほしい。
猫は基本的に、家の中がすべて。その狭い世界しか知らないまま、一生を終えることになる。
だから私達には、限られた空間の中で猫に快適に暮らしてもらうよう最大限の努力をする義務がある、と思っている。
今ならまだ間に合うかもしれない。どうか今すぐ猫に謝罪して、すぐに対策を。
赤ちゃんに配慮するばかりでなく、どうか猫への配慮も忘れずに。
まずは猫の優しさに感謝し、それ以上の優しさで応えてあげてほしい。