「こんにちは、おふたりさん」
「また来るね、おふたりさん」
バァバは我が家に来ると、猫たちにこうやって声をかけてくれる。
息子を妊娠した時、とても不安だったのが、産後のこと。
私はすでに両親を無くしているので、よくある実家への里帰りという選択肢がなかった。
そんな私の産後を、心身ともに支えてくれたのが、「バァバ」こと、オットの母だった。
息子が産まれて最初のひと月は、我が家に泊まり込んで家事全般を引き受けてくれた。
ふた月めもせっせと通ってお世話をしてくれた。
「孫に会えるから」と喜んでくれてはいたけれど、実際のところはかなり大変だったと思う。
そして、私と息子だけでなく、猫たちの面倒まで見てくれたことは、今でも心から感謝している。
出産後、私がいちばん悩んだのは、猫と触れ合う時間がほとんどないことだった。
この悩みは、私自身にとってはとても深刻な問題だったけれど、人によっては「たかが猫」。
猫ごときに構えないとか、そんなんで悩んでいるなんてバカじゃないの、と思う人もいるかもしれない。
でも、うちのバァバはそうではなかった。
子供が泣いてオムツ替え、子供が泣いて授乳、授乳が終わったら寝かしつけ、合間にほんの少しの睡眠、の繰り返しで、ほぼ休憩時間がない私の足元で、ずっと猫が鳴いていた時のこと。
「ごめんね、待っててね・・・」
そんな時、バァバは言った
「大丈夫よ、私が撫でておくから」
ゴロゴロと甘える猫の脇に座り、ずっと撫でていてくれた。
ありがとうを繰り返す私に
「遊びに来てるみたいでなんだか悪いわね」
と、バァバは笑ったけれど
私にとって、それがどれだけ有難く、どれだけ嬉しいことだったか。
思い出すだけでも、鼻の奥がツンとなる。
そんなバァバに、ラファとチョコは当たり前のように懐いた。
懐きすぎて、寝室に毎夜のように夜這いをかけていた。
\バァバ、いるかな/
\あ、いたいた/
\さ、入ろう/
\バァバ、撫でて!/
\バァバ、好き/
うちに泊まり込んでくれていたあの頃
バァバは毎朝、私にこう聞いてくれた。
「今日のお昼、何が食べたい?」
20年前に母を亡くした私にとって、この質問はとてもとても嬉しかった。
バァバと過ごした日々のことは、きっと一生、忘れない。